診断の難しさ

今日は最近仕事で感じる事を書きます。

アスレチックトレーナーという仕事は、怪我の予防、コンディショニング、怪我の応急処置、
怪我の診断、リハビリテーションまですべてこなします。
大学やプロレベルだと何人ものアスレチックトレーナーとアシスタントがいますが、
高校レベルだと雇われるアスレチックトレーナーは普通は1人。
つまり僕は1年目にしてヘッドトレーナーなわけです。
そしてすべてのスポーツをカバーしなければならないので1シーズンに5-6スポーツを
いっぺんに担当します。

高校で一番難しいことは相手が未成年者であること。
つまり緊急時の最終的な判断はアスリートの両親にあるわけです。
いくら僕が大事を取って救急車を呼びたかったり病院に連れて行きたくても親が「NO」と
いえば強制する事はできません。

昨日のゲームで2人のアスリートがフルスピードで激突。
一人はすぐに起き上がりましたが、もう一人は倒れたまま。
胸を強打したみたいです。
駆けつけると咳と同時に多くはないものの吐血してました。
口の中をチェックしても切れたりしていない、っということは体の内側からの流血。

息を吸うときと吐くときに微量の痛みがありましたが、肺の音を聞いても異常はなし。
だけどメディカルというのは最悪に起こりえる事を考えなければなりません。
内側からの血が止まらずに肺に流れたとしたら、それはりっぱな緊急事態。
血の量は微量だったので可能性は高くはないですが、起こらないとも限らない。

そのアスリートは対戦相手側のチームで両親も見に来ていました。
両親とアスリートに最悪の事態を説明して、病院にすぐに行くことをすすめました。
10分後にアスリートが戻ってきて「ゲーム終わってからじゃダメ?」
どうやらゲームを最後まで見たいらしいんです。
気持ちもわかりますがもちろん答えはNO。
だけど結局両親の判断で1時間以上もゲームが終わるまで病院にはいってませんでした

そしてフットボールの2戦目。
今度はまた対戦相手の選手ですが、下腕を骨折。
骨が肌を突き破ってはないものの、明らかに変な方向に曲がった腕。
その選手の母親がゲームを見に来ていました。
内出血によるショック症状を考えると、救急車を呼ぶのが通常ですが、母親にどうするか
尋ねると自分で病院に連れて行くとのこと。
病院は現場から20分ほどの場所。
その母親の判断は間違ってるとはいいませんが、最悪の事態を考えなければならない
メディカルスタッフと親との考えのギャップはどうしてもあるみたいです。

しかも両方のケースとも対戦相手の選手。
もう2度と会わないわけで、その後どうなったかも不明なのも気になります。
アメリカだと起こりうるのが忘れてた頃に訴訟の手紙がやってくるケース。
むちゃくちゃな理由をつけて訴訟する人もいるのでそこも怖いところですよね。アメリカは

あと難しいのが怪我の判断。
選手によって感じる痛みの度合いは同じ度合いの怪我でもまったく違うわけで、
まだプレーできるのか安静にするべきなのかの判断が難しいです。
怪我の経験が少ない高校生はまだ本当の痛みがなんなのかを知らないことも多々。
痛みの度合いを聞くのに僕がつかうのが0-10でどのくらい痛いか。
0はまったく痛くない、5は体重をかけたくないくらい、10は入院っとこんな感じ。
怪我したときは痛くてのた打ち回って泣いて、痛みのレベルも8。
そんなケースでも次の日になったら普通に歩いて、「ちょっとうずくけど大丈夫」っという
場合は多々あるわけです。
逆に「大丈夫、大丈夫」といい続けたのに重症だったという事もありえます。
なので何を自分の判断の基準にしたらいいかが難しいところですね。

選手でも練習を休みたいからと大げさに振舞う選手もいます。
逆にゲームに出たいからとなんでもないふりをする選手もいます。
コーチはスタメン選手ならなるべく出させたい、メディカルスタッフは選手の近い将来、
遠い将来を考えると無理はさせたくないのがほんとのところ。
無理させて次の大事なゲームを棒に振ったり、最悪選手生命を絶たなければなることは
なるべく避けたいわけです。

なので判断を下すのは試合のときは一瞬で選手の見解、診断、テスト、選手の心理状態、
チームの状態をすべて考慮しないといけないわけです。
それが今思う1年目でぶち当たった難しい悩みですね。

でも高校によっては文句を言ってくるコーチや親、保険のない選手など様々な
問題があります。
僕の通う高校はそういった問題はなく、恵まれていると思います。

そして最後に昨日知ったショックなできごと。
3週間前に僕のところに腰と右の下半身が痛いとバレーボール選手がきました。
症状からしてもSciatica(坐骨神経痛)だと判断してドクターに引き渡しました。
1週間前にあったときも「腰はどう?」っと聞くとやっぱ医者にいったらSciaticaで
今リハビリしてるといってました。
でも症状がまったくよくならず違う医者にかかると、Sarcoma(骨肉腫)という癌
だったそうです。
とってもレアなケースで成長期の若者に多い病気みたいですが、10年前に同じ病気に
かかった選手は亡くなったと聞きました。
たかが16歳の今まで普通にバレーボールをしてた選手が癌だったなんて・・・

長々と書きましたが、そんなこんなで毎日奮闘中です。
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by takafumi-sweet | 2008-10-24 01:25 | アメリカのぼく